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19.1. pg_hba.conf ファイル

クライアント認証はデータベースクラスタのデータディレクトリ内の、伝統的に pg_hba.conf という名前の設定ファイルで管理されています ( HBA とは、host-based authentication: ホストベース認証の略です)。 デフォルトの pg_hba.conf ファイルは、データディレクトリが initdb で初期化される時にインストールされます。 しかし、この認証設定ファイルを他の場所に設置することができます。 hba_file 設定パラメータを参照してください。

pg_hba.conf ファイルの一般的な書式は、1行につき1つのレコードというレコードの集合です。 空行はコメント用の # 文字以降の文字と同じく無視されます。 レコードは行をまたいで続けることはできません。 レコードはスペースもしくはタブ、もしくはその両方で区切られた、複数のフィールドで構成されています。 フィールドには、フィールド値が二重引用符付きの場合空白文字を含むことができます。 データベース、ユーザもしくはアドレス(例: all or replication )フィールド内のキーワードの一つを引用すると その特定の文字が失われ、データベース名、ユーザ名もしくはホスト名が名称と一致するようになります。

それぞれのレコードは接続形式、(接続形式に対して意味を持つのであれば)クライアントのIPアドレス範囲、データベースの名前、ユーザ名およびこれらのパラメータに一致する接続で使用される認証方法を指定します。 接続形式、クライアントアドレス、要求されたデータベース、およびユーザ名に一致する最初のレコードが認証処理に使用されます。 "失敗時の継続" や、 あるいは "バックアップ" はありません。 これは、もしあるレコードが選択されて認証に失敗した場合、後続のレコードは考慮されないということです。 どのレコードも一致しない時はアクセスが拒否されます。

レコードは7つの書式のうちの1つの形式を取ります。

local      

database

  

user

  

auth-method

  [


auth-options


]
host       

database

  

user

  

address

  

auth-method

  [


auth-options


]
hostssl    

database

  

user

  

address

  

auth-method

  [


auth-options


]
hostnossl  

database

  

user

  

address

  

auth-method

  [


auth-options


]
host       

database

  

user

  

IP-address

  

IP-mask

  

auth-method

  [


auth-options


]
hostssl    

database

  

user

  

IP-address

  

IP-mask

  

auth-method

  [


auth-options


]
hostnossl  

database

  

user

  

IP-address

  

IP-mask

  

auth-method

  [


auth-options


]

フィールドの意味は以下のようになっています。

local

このレコードはUnixドメインソケットを使用する接続に対応します。 この種類のレコードを使用しないと、Unixドメインソケット経由の接続は拒否されます。

host

このレコードは、TCP/IPを使用した接続に対応します。 host レコードは、 SSL もしくは非 SSL 接続のいずれかに対応します。

注意: サーバのデフォルトの動作は、ローカルループバックアドレスである localhost のみTCP/IP接続を監視しています。 よってサーバにおいて listen_addresses パラメータが適切な値に設定された状態で起動されていない限り、リモートのTCP/IP接続はできません。

hostssl

このレコードは、接続が SSL で暗号化されている場合にのみTCP/IPネットワークを使用する接続に対応します。

このオプションを使用するためには、サーバは SSL サポートができるように構築されていなければいけません。 また、 SSL ssl パラメータを設定することによりサーバの起動時に有効になっていなくてはなりません(詳細は 項17.9 を参照してください)。

hostnossl

このレコードは、 hostssl と反対の動作で、 SSL を使用していないTCP/IPの接続のみに対応します。

database

このレコードで対応するデータベース名を指定します。 all という値は、全てのデータベースと対応することを指定します。 sameuser という値は、要求されたデータベースが要求ユーザと同じ名前を持つ場合にレコードが対応することを指定します。 samerole という値は、要求ユーザが要求されたデータベースと同じ名前のロールのメンバでなければならないことを指定します。 (以前は samegroup と書いていましたが、 samerole と記述してください) スーパーユーザは、もし明示的または直接的もしくは間接的に samerole のメンバではない限り samerole のメンバとはみなされません。 また、スーパーユーザであるからといって samerole のメンバとはみなされません。 replication の値は、もしレプリケーション接続が要求された場合(レプリケーション接続は特定のデータベースを指定しないことに注意して下さい)にレコードが一致することを指定します。 それ以外の場合には、特定の PostgreSQL データベースの名前になります。 データベースの名前はカンマで区切ることで複数指定できます。 データベース名を含む別のファイルを、そのファイル名の前に @ を付けることで指定できます。

user

このレコードで対応するデータベースユーザを指定します。 all という値は、全てのユーザが対応することを指定します。 それ以外の場合には特定のデータベースユーザの名前もしくは + で始まるグループ名のどちらかになります。 ( PostgreSQL ではユーザとグループの明確な区別がないことを思い出してください。 + のマークは、 "このロールの直接的もしくは間接的なメンバのどちらかに一致していること" を意味しています。 一方、 + のマークのない名前は特定のロールにのみ一致します) このため、スーパーユーザは、もし明示的または直接的もしくは間接的にロールのメンバである場合にのみ、ロールのメンバとみなされます。 スーパーユーザであるからといってロールのメンバとはみなされません。 重複したユーザ名は、ユーザ名をカンマで区切ることによって使用できるようになります。 ユーザ名を含む別のファイルを、そのファイル名の前に @ を付けることで指定できます。

address

このレコードに対応しているクライアントマシンのアドレス。 このフィールドはホスト名、IPアドレスの範囲、もしくは下記の特別なキーワードの1つを含んでいます。

このIPアドレスは、 CIDR マスクの長さを含んだ標準のドット区切り10進表記で指定されます。 CIDRマスク長とは、クライアントIPアドレスが一致しなければならない、高位のビット数を表すものです。 指定するIPアドレスのこれより右側のビットには、0を指定しなければなりません。 IPアドレスと / 、およびCIDRマスク長の間には空白を入れてはいけません。

典型的なIPアドレス範囲の例は、単一のホストでは 172.20.143.89/32 、小規模ネットワークでは 172.20.143.0/24 、大規模ネットワークでは 10.6.0.0/16 のようなものです。 0.0.0.0/0 は全てのIPv4アドレスを意味します。また、 ::/0 は全てのIPv6アドレスを意味しています。 単一ホストを指定するには、IPv4では32というCIDRマスクを、IPv6では128を使用してください。 ネットワークアドレスでは末尾の0を省略できません。

IPv4書式で与えられたIPアドレスは、対応するアドレスを持つIPv6接続に対しても対応します。 例えば、 127.0.0.1 ::ffff:127.0.0.1 IPv6アドレスに対応します。 IPv6書式で与えられた項目は、たとえそのアドレスがIPv6内のIPv4の範囲内であったとしてもIPv6接続のみに対応します。 IPv6書式の項目は、システムのCライブラリがIPv6アドレスをサポートしていない場合拒絶されることに注意してください。

どのIPアドレスにも一致するように all と書くこともできますし、 サーバ自身のどのIPアドレスにも一致するように samehost と書くこともできます。 もしくは、サーバが直セル接続されているサブネット内のどのアドレスにも一致するように samenet と書くことができます。

もし、ホスト名(IPアドレスではない場合の全て、もしくは潜在的なホスト名として処理される特別なキーワード) が指定されている場合は、その名前は、クライアントのIPアドレスの逆引き名前解決の結果と比較されます (例えば、もしDNSが使用されている場合は逆引きDNS検索により解決されます)。 ホスト名の比較は、大文字小文字が区別されます。もし一致するものがあった場合は、 解決された、どのアドレスもクライアントのIPアドレスと等しいか否かをチェックするために (例えば、前方一致のDNS検索のような)ホスト名の前方一致の名前解決が実行されます。 もし前方、後方の両方向で一致した場合は、エントリは一致するものとみなされます。 ( pg_hba.conf 内で使用されているホスト名は、 クライアントのIPアドレスのアドレス-名前解決が返すホスト名の1つでなければいけません。もしそうでなければ この行は一致しません。1つのIPアドレスを複数のホスト名に関連付けるホスト名データベースもありますが、 IPアドレスの解決を要求された場合にオペレーティングシステムは1つのホスト名のみを返します。)

ドット( . )で始まるホスト名の特定は実際のホスト名のサフィックスに一致します。 よって、 .example.com は、 foo.example.com に一致します ( example.com だけでは一致しません)。

ホスト名が pg_hba.conf 内で指定されている場合、名前解決が適度に早いことを 確かめてください。 nscd のようなローカル名前解決のキャッシュを設定することによる恩恵です。 また、クライアントのIPアドレスの代わりにホスト名がログで見られるように、 log_hostname の 設定パラメータを有効化することもできます。

これらのフィールドは host および hostssl hostnossl レコードにのみ適用されます。

IP-address
IP-mask

このフィールドは CIDR-address 表記の代替として使用可能です。 マスク長を指定する代わりに、実際のマスクを分離した列で指定します。 例えば 255.0.0.0 はIPv4のCIDRマスク長8を意味し、 255.255.255.255 はCIDRマスク長32を意味しています。

このフィールドは host および hostssl hostnossl レコードにのみ適用されます。

auth-method

接続がこのレコードに一致する場合に使用する認証方式を指定します。 使用できる選択肢は以下にまとめていますが、詳しくは 項19.3 を参照してください。

trust

接続を無条件で許可します。 この方式は、 PostgreSQL データベースサーバに接続できる全てのユーザが、任意の PostgreSQL ユーザとしてパスワードや他の認証なしでログインすることを許可します。 詳細は 項19.3.1 を参照してください。

reject

接続を無条件に拒否します。 特定のホストをあるグループから "除外" するために便利です。 例えば、1行の reject は特定のホストが接続することを拒否します。一方、 後ろの行では特定のネットワーク内の残りのホストが接続することを許可します。

md5

クライアントに対して認証時にMD5暗号化パスワードを要求します。 詳細は 項19.3.2 を参照してください。

password

クライアントに対して認証時に平文のパスワードを要求します。 パスワードはネットワークを通じて普通のテキスト形式で送られますので、信頼されていないネットワークでは使用しないでください。 詳細は 項19.3.2 を参照してください。

gss

ユーザの認証にGSSAPIを使用します。これはTCP/IP接続を使用するときのみ使用可能です。詳細は 項19.3.3 を参照してください。

sspi

ユーザの認証にSSPIを使用します。これはWindowsを使用するときのみ使用可能です。詳細は 項19.3.4 を参照してください。

krb5

ユーザ認証にKerberos V5を使用します。 TCP/IP接続の時のみ有効です。 詳細は 項19.3.5 を参照してください。

ident

クライアントのオペレーティングシステムにおけるユーザ名をクライアント上のidentサーバに尋ねてユーザ名が要求されたデータベースユーザ名と一致するか検査します。 Ident認証は、TCP/IP接続でのみ使用可能です。ローカル接続が指定されている場合は、peer認証が代わりに使用されます。 詳細は 項19.3.6 を参照してください。

peer

クライアントのオペレーティングシステムにおけるユーザ名をオペレーティングシステムから取得し、ユーザ名が要求されたデータベースユーザ名と一致するか検査します。 これはローカル接続の時にのみ使用可能です。詳細は 項19.3.7 を参照してください。

ldap

LDAP サーバを使用して認証します。 詳細は 項19.3.8 を参照してください。

radius

RADIUSサーバを使用して認証します。 詳細は 項19.3.9 を参照してください。

cert

SSLクライアント証明を使用して認証します。 詳細は 項19.3.10 を参照してください。

pam

オペレーティングシステムによって提供されるPAM(Pluggable Authentication Modules)サービスを使用した認証です。 詳細は 項19.3.11 を参照してください。

auth-options

auth-method フィールドの後ろに、 認証方式のオプションを指定する、 name = value の形式のフィールドが存在する可能性があります。 どのオプションがどの認証方式に使用できるのか、についての詳細は以下で説明します。

@ 式により含められるファイルは、空白文字あるいはカンマのどちらかで区切られた名前の列挙として読み込まれます。 コメントは、 pg_hba.conf と同様に # から始まります。 また、 @ 式を入れ子にすることもできます。 @ の後のファイル名が絶対パスでない限り、参照元ファイルが存在するディレクトリから見た相対パスであるとみなされます。

pg_hba.conf レコードは接続が試みられる度に順番に検査されますので、レコードの順序はとても大切です。 典型的には、始めの方のレコードには厳しい接続照合パラメータと緩い認証方式があるのに対し、終わりの方のレコードにはより緩い照合パラメータとより厳しい認証方式があります。 例えば、ローカルTCP接続では trust 認証方式、リモートTCP接続に対してはパスワードを要求したいとします。 この場合、広範囲にわたって許可されるクライアントのIPアドレスに対するパスワード認証を指定するレコードの前に127.0.0.1からの接続に対する trust 認証指定のレコードが置かれなければなりません。

pg_hba.conf ファイルは起動時と、主サーバプロセスが SIGHUP 信号を受け取った時に読み込まれます。 稼働中のシステムでファイルを編集した場合は、( pg_ctl reload あるいは kill -HUP を使用して)postmasterにファイルをもう一度読み込むように信号を出さなければなりません。

ティップ: 特定のデータベースに接続するためには、ユーザは pg_hba.conf による検査を通過しなければならない他、そのデータベースに対する CONNECT 権限を持たなければなりません。 どのユーザがどのデータベースに接続できるかを制限したければ、通常、 pg_hba.conf 項目に規則を追加するよりも、 CONNECT 権限の付与・削除を行う方が簡単です。

pg_hba.conf ファイルの例をいくつか 例19-1 に示します。 各種認証方式の詳細についてはその後で説明します。

例 19-1. pg_hba.conf の項目の例

# ローカルシステム上の全てのユーザが、任意のデータベースに
# 任意のデータベースユーザ名でUnixドメインソケットを使用して接続することを許可
# (ローカル接続ではデフォルト)。
#
# TYPE  DATABASE        USER            ADDRESS                 METHOD
local   all             all                                     trust

# ローカルループバックのTCP/IP接続であることを除いて上記に同じ。
#
# TYPE  DATABASE        USER            ADDRESS                 METHOD
host    all             all             127.0.0.1/32            trust

# IPv6でも上記に同じ
#
# TYPE  DATABASE        USER            ADDRESS                 METHOD
host    all             all             ::1/128                 trust

# ホスト名使用すること以外は上記に同じ(一般的にIPv4とIPv6の両方をカバーします)
#
# TYPE  DATABASE        USER            ADDRESS                 METHOD
host    all             all             localhost               trust

# ネットマスク列を分けて記載していることを除いて上記に同じ
#
# TYPE  DATABASE        USER            IP-ADDRESS      IP-MASK             METHOD
host    all             all             127.0.0.1       255.255.255.255     trust

# IPアドレス192.168.93.xを持つ全てのホストの全てのユーザが、
# identがその接続について報告するのと同じユーザ名(典型的にはオペレーティングシステムのユーザ名)で
# データベース「postgres」へ接続することを許可。
#
# TYPE  DATABASE        USER            ADDRESS                 METHOD
host    postgres        all             192.168.93.0/24         ident

# ユーザのパスワードが正しく入力された場合、
# ホスト192.168.12.10からのどのようなユーザでもデータベース「postgres」へ接続することを許可。
#
# TYPE  DATABASE        USER            ADDRESS                 METHOD
host    postgres        all             192.168.12.10/32        md5

# ユーザのパスワードが正しく指定された場合は、
# example.comドメイン内のホストからの、どのユーザからのデータベース接続も許可する。
#
# TYPE  DATABASE        USER            ADDRESS                 METHOD
host    all             all             .example.com            md5

# 先行する「host」行がなければ、これら2行によって192.168.54.1からの接続
# の試みを全て拒否(この項目が最初に照合されるため)。
# ただし、インターネット上の他の全ての場所からのKerberos 5接続は許可。
# ゼロマスクは、ホストIPアドレスのビットが考慮されずに
# どのホストでも照合できることになる。
#
# TYPE  DATABASE        USER            ADDRESS                 METHOD
host    all             all             192.168.54.1/32         reject
host    all             all             0.0.0.0/0               krb5

# 192.168.x.xホストからのユーザが、ident検査に通る場合、
# どのデータベースにでも接続を許可。もし、例えば、identが「bryanh」と認定し
# 「bryanh」がPostgreSQLのユーザ「guest1」として
# 接続要求を出す場合、「bryanh」は「guest1」として接続が許可されるという
# マップ「omicron」に対する記載事項がpg_ident.confにあれば接続を許可。
#
# TYPE  DATABASE        USER            ADDRESS                 METHOD
host    all             all             192.168.0.0/16          ident map=omicron

# ローカル接続に対して、以下のたった3行しか記載がない場合、ローカルユーザは 
# 自分のデータベース(データベースユーザ名と同じ名前のデータベース)にのみ接続許可。
# ただし管理者とロール「support」のメンバは全てのデータベースに接続可能。
# $PGDATA/adminsファイルは管理者のリストを含む。  
# 全ての場合にパスワードが必要。
#
# TYPE  DATABASE        USER            ADDRESS                 METHOD
local   sameuser        all                                     md5
local   all             @admins                                 md5
local   all             +support                                md5

# 上記の最後の2行は1つの行にまとめることが可能。
local   all             @admins,+support                        md5

# データベースの列にはリストやファイル名も使用できる。
local   db1,db2,@demodbs  all                                   md5

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